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成田西の家

夫婦と子ども2人の4人家族のための住宅である。

敷地は善福寺川に近接する、南北に長い旗竿敷地であり、南側は川沿いの緑地やテニスコートと接し、北側には交通量の多いバス通りに接道している。

平面計画は1階を家族の共用部、2階を寝室、水周り等とし、家族と過ごす場所、それぞれの時間を過ごす場所を明確に分けた。

緑地に面する南側は良好な環境ではあるものの、平日の日中もテニスコートはフル稼働であり、人の気配は常に感じる。不用意にオープンにしてしまうとかえって居心地が悪くなるため、内外の関係性については検討を重ねた。

まず、建物全体を2つのボリュームに分け、南北方向にずらして建てることで「入隅」をつくり、北側には玄関の庇を、南側にはバルコニーを設けた。バルコニーは採光条件の良い位置で物干しができるとともに、1階開口部分の庇の役目も果たしている。庇に覆われたテラスはテニスコートと内部空間の間の中間領域のような程よい日陰のスペースになっており、テニスコート側との心理的な距離感を作り出すことも期待した。

1階は玄関、倉庫を除きほぼワンルームである。南側に設けたリビングは1階床レベルから1段下がることで、ダイニングキッチンと連続した空間でありながら居場所としての変化をもたらせた。窓辺には造り付けのソファベンチを設け、腰掛けた時にテニスコートにいる人と目線が合わなくなるよう高さを設定し、リビングの居心地に配慮した。

北側は、建物のボリュームのズレにより外観に奥行感が生まれ、落ち着いた佇まいになったかと思う。また、「入隅」に玄関を設け、騒音や歩行者の視線に対しての距離感を感じられるよう少し回り込むようにアプローチを計画した。

間取りの特徴として、将来的に自宅でお菓子教室をしたいという要望に対して、ダイニングキッチンの中央に3.5m×1mの大きなテーブルを提案した。多人数での作業にも対応でき、日頃は料理の盛り付けスペースに使ったり、子ども達も宿題を広げて料理中の母と対話をしながら過ごすことのできる万能な「居場所」になっており、この家の中心になっている。ダイニングとリビングの関係も、リビングへ1段下がって入ることが居場所の切り替えとして機能しているため、一続きの空間でありながら程よい距離感を作り出している。

2階は水周り、共有クローゼットを効率よく配置し、家事動線を短くまとめつつ、限られた面積の中で各居室の面積が十分確保できるよう配慮した。

​小さな家ではあるが、少しの操作を加えることでそれぞれの場所に特徴や居心地を付与し、実面積以上の広がりを感じられる住宅になったかと思う。

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所在地   東京都杉並区

完成    2018年

構造/用途 木造/戸建住宅

工事種別  新築

床面積   85.43㎡

設計    秋山槙之介建築事務所

​施工    匠陽

写真    石井雅義/秋山槙之介

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